初めて意識を持ったとき、彼女はガラスの蝶から成る雲の中にいた。
面白い、彼女は思った。どうやってこんなに動いているの?紐はあるのかしら。
彼女は膝をつき、ドレスを直した。
それからそこには紐などなく、飛んでいるものも蝶ではなかったことに気が付いた。
自由に飛び回る、ガラスの破片。「楽しい!」と彼女は思い、そう言った。
ガラスは、彼女を取り巻く白いものとは異なる世界を映した。
海、都市、火、光。彼女は手を挙げて、様々な世界を映すガラスを散らし、嬉しそうに笑った。
彼女はその時、そのガラスの破片に名前があったことを知らなかった。アーケア。
正直なところ、名前なんてどうでもよかったのだ。
彼女は見て、触れて、渦を作って、その美しさを楽しんだ。それで十分だったのではないだろうか。
そこには6つの疑問があった。誰が、何を、何処で、何時、何故、どうやって。
これらの疑問に対し、彼女は何も聞かず、答えを求めなかった。
アーケアの光を浴びる代わりに。これが彼女の、新しい世界との出会いだった。